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thumb|right|200px|H-IIAロケット2号機の打ち上げ(2002年)

H-IIA ロケット(えいちつーえいロケット・えいちにえいロケット)は、JAXA(旧宇宙開発事業団) が開発した人工衛星打上げ用ロケットであり、H-IIロケットの打上げコストを低減し国際競争力を回復するために再設計を行ったものである。

7号機と9号機の打ち上げサービスは解散した民間企業『ロケットシステム(RSC)』が請け負ったが、法律上打上げは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)しか行うことができないため、JAXAに委託する形で行われた。

特徴

基本的には H-II の設計コンセプトを踏襲するが、全体にわたり調達・組立・打上げコストを下げるための見直しを行った。

  • 第1段エンジン LE-7A の液体燃料配管系の簡素化による部品点数・溶接箇所など作業工程削減。
  • 第2段エンジン LE-5B も推進力の向上とともに部品点数・作業工程の低減。H-IIロケット5号機の事故で問題となったろう付けの施工箇所なども大幅削減されている。
  • 第2段燃料タンクを一体型から独立型に変更。一体型だと隔壁を通して保存温度の異なる液体水素液体酸素が接するため温度管理が複雑になっていた。
  • 固体ロケットブースタを4分割構造から一体型に変更
  • 1/2段分離部をアルミ合金から炭素繊維複合材に変更し軽量化
  • 搭載電子機器の小型・軽量化と配線のデータバス化による配線数の削減
  • 人工衛星の取り付けを射点から整備棟で行えるようにするとともに2機同時に組立が可能な発射場設備の整備。発射点も1箇所から2箇所に増設し、運用の自由度を向上。

このほか、部品技術の国産化にこだわらず、有利であれば輸入品も用いた。これは H-II で国産化にこだわったことから後退しているように見えるが、技術を習得したからこそ有利に購入できるという面もあり、自主技術を持つこと自体は依然有意義であるとされる。また、部品点数・作業工程の低減は信頼性の向上にも貢献する。これらの費用改善を行った結果、H-II で約190億円であった打ち上げ費用を、世界市場の相場である100億円未満を満たす約85億円にまで下げることができた。

H-IIAロケットは固体ロケットブースタ (SRB) や固体補助ロケット (SSB)、液体ロケットブースタ (LRB) の本数や構成を変更することで、ペイロード重量の軽重に対し柔軟に対応できる(ただし、LRB の開発は中止されている)。

構成と諸元

主要諸元一覧

段数(Stage) 第1段  固体ロケットブースター

(SRB-A)

固体補助ロケット

(SSB)

第2段 衛星フェアリング

(4S型)

諸元 全長 37.2m 15.2m 14.9m 9.2m 12.0m
外径 4.0m 2.5m 1.0m 4.0m 4.07m
質量 114t 150t 31.0t 20.0t 1.4t
エンジン名称 LE-7A

(LE-7の改良型)

固体ロケットモータ使用 固体ロケットモータ使用 LE-5B(LE-5Aの改良型)

(再々点火可能)

エンジン諸元 推進薬重量 101.1t 130.0t 26.2t 16.9t
推進薬種類 液体酸素/液体水素

(Lox/LH2)

ポリブタンジエン系コンポジット固体推進薬 ポリブタンジエン系コンポジット固体推進薬 液体酸素/液体水素

(Lox/LH2)

推力 1,098kN 2,245kN 745kN 137kN
比推力 442sec 280sec 282sec 447sec
有効燃焼時間 390sec 100sec 60sec 530sec
姿勢制御方式 ジンバル補助エンジン ジンバル ジンバルガスジェット装置
主要搭載電子装置 誘導制御系機器/テレメトリ送信機 誘導制御系機器/レーダトランスポンダテレメータ送信機/指令破壊装置
  • 固体ロケットブースタ(SRB-A, SRB-A2)

H-II 用の SRB を改良した SRB-A ×2基の装着を基本としている。打ち上げ能力増強のため、SRB-A の燃焼特性を変更した SRB-A2 ×4基を装着する構成も計画されている。

  • 固体補助ロケット(SSB)

打ち上げ能力増強のため、上記 SRB-A ×2基に加え、SSB を2基、あるいは4基装着できる。

  • 液体ロケットブースタ(LRB)

さらに打ち上げ能力を増強するため、上記の SRB-A ×2基に加え、LE-7A 型ロケットエンジンを2基使用する LRB を1基、あるいは2基を装着する増強型の構想があったが、この構想はH-IIB 型に置き換えられることとなった。

  • ペイロード・フェアリング

ロケット本体と同じ直径 4m のもののほか、大型衛星用に 5m のフェアリングも使用可能である。また、2個の衛星を同時に軌道投入できるフェアリングもある。

打上げ能力

表 形式名と打ち上げ能力

H2A202型 H2A2022型 H2A2024型 H2A204型 H2能力向上型
静止トランスファ軌道

(GTO)※

4100kg 4500kg 5000kg 6000kg -
太陽同期軌道

(SSO)

3600kg(夏)

4400kg(夏以外)

低軌道

(LTO)

10000kg 16500kg

※:GTOからGEO:静止軌道へ軌道遷移は、衛星側に搭載するアポジエンジンの動力で行う。

  • 7号機以降は、燃焼パターンを見なおした改良型SRB-Aを装着しているため、上記の表示よりもGTOへの投入能力がおよそ300Kgほど少なくなっている。
  • 型式名

H2Aabcd(例:H2A2024)
:(a:段数(2段式固定),b:LRBの数,c:SRB-AまたはSRB-A2の数,d:SSBの数(0本の場合は表記なし))

打上げ実績

全て種子島宇宙センターから打上げ。

表 打ち上げ実績一覧

機体 形式 打上げ年月日

日本時間

衛星 命名前 目的 軌道 備考
試験機1号機 H2A202型 2001年8月29日

16時00分

VEP-2 ロケット性能確認用ペイロード2型 GTO
試験機2号機 H2A2024型 2002年2月4日

11時45分

つばさ MDS-1 民生部品・コンポーネント実証衛星 GTO 民生部品の放射線被曝特性試験のため、ヴァン・アレン帯を通過するGTO(軌道傾斜角約 28.5 度)に投入。
DASH 高速再突入実験機 GTO ISAS委託。ロケット側は分離コマンドを発行したが、衛星の製作ミスで分離機構が不動作、2段目からの分離に失敗。
VEP-3 ロケット性能確認用ペイロード3型
3号機 H2A2024型 2002年9月10日

17時20分

こだま DRTS データ中継技術衛星 GTO→GEO
USERS宇宙機 USERS 次世代型無人宇宙実験システム LEO 財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構から委託。
4号機 H2A202型 2002年12月14日

10時31分

みどり2号 ADEOS-II 環境観測技術衛星II型 SSO
FedSat オーストラリア小型衛星 SSO
観太くん WEOS 鯨生態観測衛星 SSO
マイクロラブサット μ-LabSat SSO
5号機 H2A2024型 2003年3月28日

10時27分

IGS-1A 情報収集衛星1号A レーダー衛星 LEO
IGS-1B 情報収集衛星1号B 光学衛星 LEO
6号機 H2A2024型 2003年11月29日

13時33分

IGS-2A 情報収集衛星2号A レーダー衛星 MTSAT-1Rを搭載する予定だったが、衛星製作の遅延で延期され、代替で情報収集衛星2号を搭載。

SRB-A1本が燃焼後分離されず予定速度が得られなかった為、衛星軌道投入が不可能と判断、空中で指令破壊。

IGS-2B 情報収集衛星2号B 光学衛星
7号機 H2A2022型 2005年2月26日

18時25分

ひまわり6号 MTSAT-1R 運輸多目的衛星新1号 GTO→GEO RSC打ち上げサービス

打ち上げ約40分後に衛星分離に成功。

8号機 H2A2022型 2006年1月24日10時33分 だいち ALOS 陸域観測技術衛星 SSO 打ち上げ16分30秒後に衛星分離に成功。
9号機 H2A2024型 2006年2月18日

15時27分

ひまわり7号 MTSAT-2 運輸多目的衛星新2号 GTO→GEO RSC打ち上げサービス

打ち上げ28分11秒後に衛星分離に成功。 1か月間に2回の大型ロケット打ち上げに成功したのは日本の宇宙開発史上初。

今後の予定

以下はH-IIAロケットでの打ち上げが決定している衛星である。あくまで予定であり、状況に応じて変更がある事が予想される。

2006年(平成18年)度
  • 次期情報収集衛星1号(9月10日12:00~15:00)
  • 技術試験衛星VIII型(ETS-VIII)
  • 次期情報収集衛星2号(1~2月)
2007年(平成19年)度
  • SELENE(月周回探査機、宇宙科学研究本部)
  • 超高速インターネット衛星(WINDS)

状況

H-IIロケット以前はアメリカからの技術導入によって打ち上げていた。しかし、純国産技術で作られた H-II、その技術を用いて発展した H-IIA が打ち上げられるまでになった。6号機での打ち上げ失敗は、これら日本のロケットが新たなる時代に突入した証拠とも言うことができる。

H-IIAロケットは、第1段・第2段に液体酸素・液体水素ロケットエンジンを用いている。これは酸素と水素を反応させ、燃焼後に水だけを生成する。このエンジン技術については、アメリカの企業からもデルタIIIの上段用としてLE-5Bの引き合いが来たが、軍事に利用される恐れがあるとの理由から日本政府は許可を出していない。

6号機の事故の原因は、ロケットの両脇にある固体ロケットブースター(SRB-A)のノズルが熱で破損したことである。この失敗から、以降のSRB-Aのノズルはベル型に変更された。しかし、元はロケット開発に十分な開発資金が与えられなかった事がその原因であり、「技術を知らない人間が金を出す」と言う、役人主導の科学技術政策の弱さが出た結果だという批判もある(関連文献1参照)。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、H-IIA 6号機の失敗を受け、SRB-A の改良に着手した。燃焼試験を繰り返して信頼性を確認し、失敗から約1年3ヶ月ぶりの2005年2月26日に7号機を打ち上げた。

打ち上げは無事成功したが、H-IIAロケットへの信頼を取り戻すにためには、今後継続して打ち上げを成功させて実績を積む必要がある。打ち上げ後の記者会見で、井口宇宙開発委員会委員長は「今後13回連続で成功すると成功率95%に達するが、安定したといえるためにはこれくらいの成功率が必要であり、それを目指したい」という考えを示した。2006年2月18日の9号機の打ち上げ成功により、成功率は9機中8機の88.9%である。

関連文献

  1. 『国産ロケットはなぜ墜ちるのか』 松浦晋也著(日経BP社 ISBN 4822243834)

関連項目

外部リンク


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