地上デジタルテレビジョン放送






thumb|地上デジタルテレビ放送の画像イメージ(2004年11月 NHK大阪放送局施設見学会で)地上デジタルテレビジョン放送(ちじょう - ほうそう)は、地上(陸上)のデジタル方式の無線局により行われるテレビジョン放送の事。地上波デジタルテレビ放送の日本に於ける名称で、地デジと略される事もある。
概説(日本国内)
地上デジタルテレビジョン放送は、1953年に放送が開始された地上のテレビジョン放送を、UHFチャンネル(13~52ch 53~62chは2012年まで暫定使用される)を使ったデジタル方式に置き換えるものである。2003年に東京、名古屋及び大阪の3大都市の一部地域から放送が開始され、2006年12月までに全都道府県庁所在地で、2010年までに全国全地域に拡大し、日本全国での受信を可能にする予定である。
国の政策により、現在放送されている地上アナログテレビジョン放送は2011年7月24日を以て全国一斉に終了(停波)する、つまり、アナログのみに対応している従来型テレビ受像機では一切のテレビ放送が見られなくなる予定である(但し地デジ受信機及びサテライト局の普及状況如何では、アナログ放送終了時期が2011年7月24日より早まる可能性や、逆に延期される可能性もあり得る)。これによって空きとなるVHFチャンネルとUHFチャンネルの53~62chの周波数帯は、地上デジタルラジオ放送や移動体通信用に転用する予定といわれている。
呼称
地上系による放送に於けるテレビジョン放送について、デジタル放送の決定以来巷間では「地上波デジタル放送」と呼称していた。しかし、総務省が「地上デジタル放送」を呼称とした事により、2002年12月頃より放送事業者側では「地上デジタル放送」と呼称を変更している。その他メディアでは語感が良い、使い慣れているなどの判断から現在でも「地上波デジタル放送」と呼んでいるところもある(「デジタル放送の一覧」の項目も併せて参照の事)。
特徴など(日本国内)
right|160px|thumb|瀬戸デジタルタワー
地上デジタルテレビジョン放送が地上アナログテレビジョン放送よりも優れている部分、並びに追加された機能は以下の通り。
- 高画質(MPEG-2圧縮による高精細度テレビジョン=ハイビジョン放送)
- 高音質(キー局などからのネット番組でも光ファイバーのデジタル中継回線を使用して送られているため、音質劣化が少ない。音声には圧縮音声としてのMPEG2AACが使われている。これによりアナログ放送ではモノラルでの二ヶ国語放送かステレオ2chの一方でしか放送が不可能だったが、ステレオ2chによる二ヶ国語放送や、5.1chサラウンドステレオでの放送も可能になった。)
- 番組表、番組情報、天気予報などのデータ放送 データ放送のフォーマットはハイビジョン放送、ワンセグともキー局が作り、各地方局でローカル情報を追加するのが基本である。独立局では各局が個別にフォーマットから制作している。
- 双方向サービス 青・赤・緑・黄の4色ボタンを利用して視聴者参加型クイズやアンケート、投票を行うことができる。(ワンセグも双方向が可能)しかし多大なコストがかかることや、2011年までは地上波アナログ放送とサイマル放送をする都合上、レギュラー編成で導入している番組はない。特別番組ではNHKを中心に採用することがある。(主な特別番組では、NHK紅白歌合戦やTBS系のオールスター感謝祭などが双方向に対応している。)
- マルチ編成(SDTV×最大3番組 現在レギュラー編成で導入しているのはNHK静岡放送局のデジタル総合テレビとNHKデジタル教育テレビ(全国)、東京MXテレビのみ。特別番組や臨時編成では他の放送局(NHK・民放共)も行う場合がある。)
- 移動体向け地上デジタルテレビジョン放送(ワンセグ)
- ノイズ及びゴーストのない映像(アナログ波より電波妨害全般に強く、アナログ放送で電界強度が十分でありながら画質が劣化してしまう条件であっても、デジタル放送では障害物の影響を排除して鮮明な画像が受信できる。ある程度の受信レベルさえ確保できれば難視聴地域の減少も可能となり、中継局の合理化にもつながる)
- 同一周波数中継(SFN)が可能で、電波の利用効率を大幅に高める事ができる。
- 著作権管理機能(B-CAS)
- B-CASカードによる限定受信
※これらの特徴は、基本的にBSデジタル放送と規格上は同等である。しかし、BSデジタルよりも障害物の多い地上デジタルでは、安定して受信可能な実効ビットレートがより低く、従ってブロックノイズ等の品質低下がより多い、とする向きが一部にある。
※1チャンネル当たりの帯域幅には制限があるので、高精細度テレビジョン放送とマルチ編成はどちらか一方のみ。
※受信の際、デジタル信号のエンコード・デコード処理のため地上アナログ放送と比べて約2秒のタイムラグが発生する。(特にデコード処理において地上デジタル放送チューナー機器の仕様に依存する)この為、時刻出しでは時刻表示の変化の仕方を変えるなどして、タイムラグによる影響を最小限にとどめている。
サイマル放送
地上デジタルテレビジョン放送局の免許は「地上デジタルテレビジョン放送局の免許方針」に副って割り当てられる。同方針に規定する免許の基本的要件として「自ら行う地上アナログテレビジョン放送の大部分の放送番組を含めて放送するものであること」である事が求められ、具体的には「自ら行うアナログテレビジョン放送(補完放送を除く)と同一の放送番組の放送(略)については、1日の放送時間中、3分の2以上の時間で放送が実施されるもの」でなければならないとしている。これをサイマル放送という。
リモコン番号
日本の地上デジタルテレビジョン放送では、SI情報を送信し、郵便番号などで地域設定をした受信機でそれを受信する事で、受信された周波数の放送を特定のリモコン番号に割り当てる事ができる。この番号はあらかじめ放送局毎にリモコンキーIDとして決められている。
アナアナ変換
地上デジタルテレビジョン放送は、現在地上アナログテレビジョン放送にも使われているUHF帯の一部を用いての放送となる。デジタル放送開始のために使用できる送信周波数帯(送信チャンネル)を確保するため、一部の地域では、デジタル放送と同一チャンネルとなる既存のUHFアナログ中継放送局の送信チャンネル(周波数)を変更する事となった。このための費用のうち、キー局などの送信設備の対策に係る費用を除く各家庭用の受信設備の対策に係るもの、及び地方局の送信設備の対策に係るものは国が電波利用料を財源に支出し、各戸毎に変更工事を行っている。この様なアナログ放送チャンネルの変更(移動)を、一般にアナアナ変換(アナログ-アナログ変換を短縮したもの、通称アナ変)と呼んでいる。
このアナアナ変換の実施は、地上デジタル放送開始時点には終了している事が望ましい。しかし、影響を受ける地域の視聴者を個々に回って受信周波数の変更作業を行う必要から、作業そのものに時間が掛かったり、変更したチャンネルが別の地域に影響を及ぼすため、その地域のアナアナ変換を終了させてからでないと、別の地域のアナアナ変換が開始されなかったりといった理由で、先行して放送開始した三大都市圏を中心に、放送開始時点までに対象の全戸の変更が完了していなかったり、完了できないところがある。従って既存のUHFアナログ放送の視聴に混信妨害を与えられない様に放送アンテナの指向性・送信出力を制限しているため、局によってはアナアナ変換完了までデジタル放送の受信可能範囲が著しく制限される事となった。
B-CASによる限定受信
日本では、地上デジタルテレビジョン放送の限定受信システム(CAS)として、B-CASが導入されている。B-CASによる限定受信及びコピー制御は放送開始当初は行われていなかったが、2004年4月5日に運用が開始された。
地上デジタル放送対応の各種機器には、B-CASカードというICカードを挿入する。B-CASカードは対応機器に必ず同梱して配布されている。限定受信により、地上デジタル放送では一部の番組を除き対応機器にB-CASカードを挿入する事が必須になり、挿入しないと視聴などが不可能になった。また、コピー制御により、一部の番組を除きコピー制御信号(コピー禁止又はコピーワンス)が付加されており、録画機器での放送・番組の録画に対して、様々な制限が掛かる場合がある(DVDレコーダー#DVDレコーダーとコピー制御の関係の項などを参照の事)。
なお、地上デジタル放送では、B-CASのユーザー登録をしなくても画面上に「ユーザー登録のお知らせ」は表示されない(受信確認メッセージ(NHK /digital内)参照)。詳細に関してはB-CASの項目を参照。
受信方法(日本国内)
- 地上デジタル放送対応のチューナー(HDDレコーダーなどを含まないチューナー単体の市場実売価格:2~10万円程度)、或いは同対応のテレビ受像機(D端子もしくはHDMI端子搭載のチューナー非搭載機種もあるが)ないしHDDレコーダーが必要となる(後者はネット通販で最安で5万円台で販売されている例もあり、チューナー単体を買うより割安と言える。但し、起動に時間が掛かる機種が多いのが難点である。)。テレビ受像機は現状では21インチ以上のものが大半で、それ以下の小型モデルのラインアップが少ない点も普及の妨げになっている(2006年8月現在、業界最少・最安値の地デジテレビは松下のTH-15LD60のみ)。
- 現在、単体のチューナーを生産しているのはソニー、松下電器産業〈2機種〉、DXアンテナ、マスプロ電工の4社のみで、OEM製品を含めても種類は少ない。但し、アイ・オー・データ機器とユニデンが2006年にも自社生産のチューナーを発売すると報道されている。
- ハイビジョン画質で視聴する事ができるかどうかは、受像機の性能による。また、既存のアナログ放送用の受像機にデジタルチューナーをつないで視聴する場合は、受像機がハイビジョン画質を再現できる能力を持つ事の他に、受像機とチューナーのD端子同士を専用ケーブルでつなぐことなど、ハイビジョン画質を伝える事ができる接続方法を採らないとハイビジョン画質にはならない。
- 地上デジタルテレビジョン放送はUHF帯で放送されるので、オールバンド(13~62ch)対応のUHFアンテナ(八木・宇田アンテナ)を設置する必要がある。送信チャンネルによってはローバンド(13~44ch メーカーによって異なる場合があるので注意)、ハイバンド(25~62ch メーカーによって異なる場合があるので注意)対応のアンテナでも可能な場合がある。また、ローバンド又はハイバンド対応アンテナでアナログ放送を受信していた場合は、それぞれハイバンド、ローバンド対応アンテナを追加設置する方法もある。新規に購入する場合は電子情報技術産業協会(JEITA)の「DHマーク」の付いたアンテナが勧めている。最近では放送区域内(強・中電界地域(電界強度60dB以上))向けに八木・宇田アンテナより小型で特殊なUHFアンテナが各メーカーから発売されている。
- 放送区域内(強・中電界地域、放送エリアのめやすのエリア内)の放送局を受信する場合は地元局用の14素子程度のUHF八木・宇田アンテナ又は小型で特殊なUHFアンテナを地上10メートルの高さに設置して受信できる。放送区域外(弱電界地域(電界強度60dB未満)、放送エリアのめやすのエリア外)の放送局を受信する場合は電界強度に応じて素子数(最大で30素子、場合によってはパラスタック型、素子数が増えるほどアンテナが大型となり、アンテナの設置・維持管理が困難であることが欠点であったが、最近はアンテナの設置・維持管理が容易になるように小型化した上で30素子並みの動作利得があるアンテナ(マスプロ電工の「LS14TMH(東・名・阪専用)」など)が発売されている)の多いアンテナを地上10メートルを超える高さに設置する必要がある(30素子のUHFアンテナを設置しても受信困難な場合は地上デジタル放送対応のブースター(増幅装置)を併用する。但し、電界強度が極度に弱い地域は30素子のパラスタック型UHFアンテナとブースターを使っても、またいくら受信点を高くしても受信できない。)。強電界地域(電界強度80dB以上)は、八木・宇田アンテナの他に軒先アンテナ、室内アンテナ、簡易型アンテナなどを地上10m未満の高さに設置しても受信可能である。移動体端末でワンセグを受信する場合、地上10m未満の高さでの受信になってしまうため放送区域内でも受信時に電界強度が弱い場合は受信できない。
- アンテナの腐食やケーブルの腐食・断線などによっては交換が必要である。
- 平行フィーダー線での受信は外部からの雑音に弱いため、同軸ケーブルへの交換が必要である。
- 共聴受信設備で受信する場合、強電界地域などを除いてアンテナ線・混合器・ブースター・分配器・壁面直列ユニット(アンテナコンセント)などは全て地上デジタル対応の高性能タイプに交換しなければならない(アンテナコネクターも受信機側は必ず外部妨害波に強いF型接栓を使用。従来のL型プラグは使えない)。さらに110度CSデジタル放送の受信には「2150MHz」という、従来より大幅に広い伝送帯域に対応した高性能設備が必要である。
- ケーブルテレビ経由で視聴する場合、局によって「トランスモジュレーション方式(STBでないと受信できない電波に変換)と「パススルー方式(通常のテレビやチューナーで受信できる電波のまま送信 送信チャンネルを変更する場合もある)」の二通りある。前者はSTBが必要だが、後者は個別受信同様に地上デジタル対応機器のみで視聴できる(但し前者はUHF以外の周波数帯に変換するため、局や地域によって受信障害が発生する場合あり)。
- 地上デジタル用のアンテナ線接続は、コピーガードなどによる画像の乱れを避ける観点からアナログチューナーのみ搭載のビデオデッキやDVDレコーダーを経由せず、直接地上デジタルチューナー(内蔵テレビ)に接続するのが望ましい。もしアナログのビデオやDVDレコーダーへの分配が必要な場合、地上デジタル対応の高性能型分配器(全電流通過型)を用いる必要がある。これに対して地上デジタルチューナー内蔵のDVDレコーダーやビデオデッキにはアナログ・デジタル双方の分配器が内蔵されているので、録画機器からテレビへは従来のアナログ機器と同じ感覚で接続可能。
従来のアナログ受信機になかった新項目
■郵便番号の設定
- 地上デジタル及びBSデジタルではデータ放送が実施され、自分の住む地域や行きたい地域の情報が家庭に居ながらにしてすぐ受け取れるという特徴を持っている。この機能を楽しむためには初期設定時に自分が住む地域の郵便番号を正しく入力する必要がある(チャンネルやデータ放送の初期表示など地域別の情報を郵便番号を振り分けるため。なおメーカーや機種によっては電話番号の市外局番入力も併せて必要)。
■電話回線、もしくはインターネットへの接続
- 双方向番組への参加や(現時点で地上波のレギュラー編成番組では導入されていないが)有料チャンネルの視聴料金やりとりのためには、電話回線への接続もしくはインターネットに接続出来るLAN回線接続が必要である(Tナビを利用する場合はブロードバンド環境であることが必要)。
- 地上デジタルテレビジョンチューナー(テレビ、HDDプレーヤー内蔵含む)には電話回線の分配機が同梱されている場合が多いが、電話機等の取扱説明書にはナンバーディスプレイ使用時は、回線に通信機器(電話機等)が2台以上接続時は保証されないと明記されているので注意が必要である。メーカーに分配機使用時のナンバーディスプレイ使用可否を確認すると、切り換え機を使えと説明を受けたりするが、テレビと電話が別部門の為、実機でナンバーディスプレイ使用可否の動作は検証はされていないようである(2006年現在)。
■個人情報の適切な管理
- 地デジ受信機を廃棄もしくは他人に譲渡する場合、「リセット機能を用いて受信機に登録された個人情報を全て削除する」という手順を必ず踏み、個人情報の外部漏洩・悪用を防がなければならない。また「B-CASカード」を受信機に正しく装着しないと全てのデジタル放送が映らないので、紛失や破損をしないよう十分な注意が必要である。さらに購入後に製品添付のハガキ、もしくは各メーカーサイトでユーザー登録をしておけば、製品に関する最新情報をメールもしくは郵便で受け取れる。
■電源プラグは抜かず、本体及びブースターの主電源は常時「入」
- 地デジチューナー(内蔵テレビ及びDVDレコーダー)には高度なソフトウェアが組み込まれている。このため視聴を終えて電源を切る際はプラグを抜いたり本体やブースターの主電源を切らずにリモコンで電源を切った状態にすることが大切である。これにより、リモコンで電源切状態の間に各種データが最新の状態に更新される。もしプラグを抜いた、あるいは本体及びブースターの主電源を切った状態が1週間以上続くと、受信機内部の番組表データは全て空になる。これを防ぐには先述の措置を講じると共に、特に本体の主電源を入れた後に当該のチャンネルに合わせ、数秒(現在の番組および次の番組の場合)から数十秒(その日の番組の場合)、もしくは数分(翌日以降の番組の場合)待つ必要がある。
一部地域での受信方法
一部の中継局で、アナログ放送停波までに放送が間に合わない可能性があるため、そうした地域に限って、衛星や光IP放送による地上デジタル放送の再送信を行う予定である。スカパー!と通信衛星を保有するJSATが衛星での再送信を、送信所や中継局を多く抱える北海道に於いて実証実験を行った後、2007年に開始する。また、光ファイバーを利用したIP放送では2006年までに標準画質(SDTV)、2008年にはデジタル放送と同じ高精細な映像で再送信する予定である。
デジタル化、及びアナログ波停波に関する問題
- 2006年現在、地上デジタルテレビジョン放送が開始されている事は知っている人は多いが、2011年に地上アナログ放送が停波になり、今現在のテレビでは地上波を見る事ができなくなる事を知らない人が多い。そのためテレビCMなどでの告知が開始されている。現に、家電量販店などの店頭のアナログチューナーのみのテレビには「2011年、アナログテレビ放送終了」のシールが貼付されている(参考リンク1、2、3)。
- ディスカウントストアなど安売り志向の小売店では、依然として地上デジタル放送が受像できないテレビが主力商品として販売されている。高価なデジタルチューナー搭載の関連機器に買い換える経済的余裕がない、ワーキングプアと呼ばれる人々が増えて来ている事、一般家庭では昔のような「一家に一台」から「一人に一台」へとテレビに対する感覚が変わっていることなどから、2011年までに全国で全面的に買い替えが進むとは考えにくいとする意見も少なくない。カーナビについては価格面などの問題で普及が進まず、99%の機種が地上デジタル放送非対応である。
- 地デジ受信機の大半は日本国内にある特定の大手メーカーでのみ生産されており、コスト面の問題から海外や中小のメーカーには日本の規格に合った地デジ受信機を生産できる経済的余裕がない。
- 現在のアナログ放送に不満がない人、つまり「画質に関係なくテレビが見られればいい」とする人も多く、移行に際しては「家電業界など関連業界が儲かるだけ」とする冷ややかな見方もある。また、周辺に電気店などが少ない地域へのフォローをどうするかという問題もある。
- 物理的に大量にある、2011年時点でも多くが不自由なく機能しているであろう現行のテレビ受像機の扱いをどうするか、3R(リデュース・リ ユース・リサイクル)の観点も含め、社会全体の負担コストが大きく、環境にも良いとは言い難い。
- 「双方向性」と言われているが「せいぜいクイズ番組に視聴者が参加できる」程度にしか活用できないのではないか。
- UHF帯に移行するための問題として、首都圏などで、築年数の経っている家屋や古いマンションなどでは、共聴設備などがVHFにしか対応していないケースがあり、設備改修費用の捻出が問題となっている。
- 「地上アナログテレビジョン放送終了」という言葉を「テレビが見られなくなる」と誤解させる詐欺事件が起こるのではないかとする向きもある。
- 総務省は、UHF帯に移行した後、空いたVHF帯を移動体通信など新規サービスに解放するとしているが、VHF帯は電波の波長が長く、受信には大きいアンテナが必要となり、使い勝手が悪い。具体的な利用例も示されていないため「電波の有効利用」との理由は説得力に欠ける。
- 衛星放送とは異なり、選択が任意ではなく、半強制的な切り替え(=アナログ波停波)である点は、視聴者にとって商品選択の自由が奪われていると言える。
- 移行に際しては混乱が予想され、それが一般市民のテレビ離れを招くと言う、本末転倒な状況さえ起こりかねない。
以上のような状況であり、既に各方面より異論が出ている。総務相の諮問機関「情報通信審議会」の地上デジタル放送推進に関する検討委員会に於いて、一部から地上アナログテレビジョン放送の停波の時期も再検討(デジタルチューナー搭載機器の低価格化によるアナログ波受像機器の置き換えが十分に浸透するまで延期すべき、と言う論調)が必要ではないかとの意見も出されている。但し、既にアナログ停波を宣言してしまっている以上、停波時期の先送りは検討しても、停波そのものの撤回は難しい。これは逆に買い替えをしてしまった人からの反発も予想されるからである。
近年の似た様な告知不足により起こった問題にPSEマーク問題がある。こちらは中古品販売に関する問題であったが、アナログ波停波の問題は全国民に関わる事なので、2011年までに周知を徹底させる事が急務である。
2006年8月現在、各テレビ局は地上デジタル放送開始及びアナログ放送終了の告知を行い始めた。さらに松下電器産業は「アナログチューナーのみを搭載した従来型モデルのテレビ受像機生産を2006年限りで終了する」と発表、今後他の電機メーカー各社もこれに追随すると思われ、チューナー関連部材の高価格については、需要拡大の波及効果によりある程度解消の方向に向かうものと思われる。
なお、これらの問題については新聞などの投書欄で読者からの意見として紹介される事はあるが、テレビのニュースなどで取り上げられる事は少ない。数々の問題はテレビ業界にとって都合が悪く、それについて触れたがらない意向が垣間見える。アナログ波停波に伴う一般市民への皺寄せの存在、国民全体がデジタル化に賛成しているわけではない事実、等が広く伝えられていない。
放送対象地域の厳密化など
地上系による放送の放送対象地域は県域又は広域が原則である(短波放送を除く)が、送信される電波は県域又は広域に留まらず県外又は圏外にも漏れる場合が多い。これは、圏外の視聴者には喜ばれる一方、放送局やそのスポンサーにとっては、隣接する都道府県又は広域圏を放送対象地域とする放送局に視聴者を奪われる事にもつながる重要な問題であった。
地上デジタルテレビジョン放送では、送信所から発信される電波の方角・強度を細かく設定できる事や、出力もアナログUHF局の10分の1に削減することで、地上アナログテレビジョン放送より放送対象地域に副った放送区域となると見られ(総務省は現在アナログ放送で見られるエリアのほとんどをデジタルで視聴可能にすると宣言している。実際に、独立局を中心にアナログ放送と同等のスピルオーバーのエリアを確保している局も多くあるが、デジタル放送に新たに割り当てられたchで混信が起こり視聴困難な地域もある。)、また、社団法人日本民間放送連盟がケーブルテレビに対して区域外再送信を認めない(放送局個別の判断で方針は運用されており、一部例外あり)事から(参照リンク)、地元の放送局は視聴者を奪い返す絶好のチャンス、自局の属する系列以外の事業者への番販の増加につながる事になるが、実際は、あまり増えないとも読み取れる。
一方、区域外再送信を売り文句に加入者を増やして来たケーブルテレビ局は、これに伴う解約者が増えかねないと異論を唱える局もあり、実質視聴可能な放送局数の減少や地域間格差の拡大(茨城県を除く関東広域圏は地上波民放が6局視聴できるのに対し、徳島県と佐賀県は地上波民放が1局しか視聴できなくなる)など、区域外視聴者からの苦情も予想される。CATV局としては、加入者の減少対策として放送対象地域外の放送局の電波がCATV提供地域の全世帯までに届いていればその放送局の区域外再送信を行うCATV局も出始めている(参考リンク)。
既存の建造物等による受信障害への対応
現在、建造物の建設によって周辺に発生するテレビ受信障害(電波障害)については、建造物の設置者が費用負担して、ケーブルテレビへの加入や共聴設備を設置し対象世帯に電波を有線送信することにより対応をおこなっているが、すでに設置されている共聴設備についてはそのほとんどが地上デジタルを想定しておらず、視聴にあたっては設備の改修が必要となることが予想される。
しかしながら、建造物の建設後に電波の送信が開始される地上デジタルについては、周辺に受信障害があっても建造物設置者が責を負う法的根拠がないため、受信状況の確認や設備の改修を行う義務もなんらかの費用を負担する義務もないことになる。
アナログ波と地上デジタルでは受信障害となる領域が違うが、建造物により一定の障害が発生することはさけられないため、アナログ波停波が近づき実状が浸透するにしたがって問題化しつつある。
なお、地上デジタルを所管する総務省においては、協議を推奨するのみで有効な指針は示せておらず、甚だ無責任な状態にある(参考リンク)。
開始時期
日本
- 日本国内では2003年12月1日午前11時より東京・大阪・名古屋の3大都市圏の一部地域で開始された。
- 2004年10月1日に、3大広域圏以外の地方都市としては初めて富山県の北日本放送とNHK富山放送局が、また、関東広域圏内で唯一県域の地上波テレビ放送局がなかった茨城県でNHK水戸放送局がそれぞれ開始した。本放送初日の開始時刻はほとんどの局が午前11時である(一部の放送局や今後設置される中継局からのデジタル放送の本放送開始時刻はその日の早朝《午前4~6時の間》の放送開始時間〈1日の起点開始時間〉から)。
- それ以降のローカル局の開始順序は下記の通り。
地上デジタルテレビ放送の実施は段階的に進められ、2011年(平成23年)7月24日には地上デジタルテレビ放送に完全移行し(計画が遅くなるなどの変更になる事は有りうるが)、現在の地上アナログテレビ放送の終了を予定している。これによりチャンネル式タイプが全廃される。そのため、開局を断念した放送局一覧の項でも触れた茨城・福井・徳島・佐賀・宮崎・沖縄の6県に割り当てられた新規アナログテレビ放送用の周波数割り当ても取り消されている他、既存の民放テレビ局(特に平成時代に開局した局)のアナログ放送中継局及び送信所の新規開設の凍結など、地上アナログ放送の新規の開局は事実上不可能(今後、これらの地域では地上デジタルでのテレビ局の新規開局の可能性がある。)となった。
- 広域圏内を除いた地方局の開始順序は富山(NHK・KNB)→静岡→東北→甲信越・福岡・沖縄→北海道・北陸→中・四国(岡山・香川を除く)→九州の大半・岡山・香川という順序の形で開始される。
- これは中・四国(特に岡山や香川)や九州には他の地方に比べて中継局が多く、また、瀬戸内海や有明海を伝播してのスピルオーバーも多数見られる事から、アナアナ変更に時間が掛かる事が原因となっている。しかし中継局が少なくスピルオーバーの影響がない福岡と沖縄の両県は九州地方の目標開始月の2006年12月ではなく8ヶ月早い4月にNHKで先行放送が開始される(しかしすべての局で開始されるのは12月となる)。逆に海を隔て2つの県に跨って放送しており他県でも視聴者が多い岡山・香川地区(特にTXN系列のTSC)は中・四国の他の県の放送開始である10月より2ヶ月遅い12月に放送が開始される。
海外
放送の方式(世界)
世界の地上波デジタルテレビ放送は、大別してアメリカ方式(ATSC)、ヨーロッパ方式(DVB-T)及び日本方式(ISDB-T)に分かれる。中国は2003年に、これらに当てはまらない別の方式の開発を決定した。これらは多重化にMPEG-2 TSを利用する事、映像符号化にMPEG-2ビデオを利用する事では一致しているものの、以下の様な違いがある。
世界の地上デジタルテレビジョン放送規格
| | ATSC | DVB-T | ISDB-T
|
| 仕様
|
| 音声
| ドルビーデジタル | MPEG-2 BC、 ドルビーデジタル | MPEG-2 AAC
|
| 外符号
| リードソロモン符号 R-S (207, 187, 10) | リードソロモン符号 R-S (204, 188, 8)
|
| 外符号インタリーブ
| 52セグメント畳込みバイトインタリーブ | バイト畳込みインタリーブ (深さ12)
|
| 内符号
| トレリス符号 (符号化率: 2/3) | 畳込み符号 (符号化率: 1/2, 2/3, 3/4, 5/6, 7/8)
|
| 内符号インタリーブ
| 12トリレス | ビット、周波数 | ビット、周波数、時間
|
| 搬送波
| シングルキャリア
| マルチキャリア (COFDM)
| マルチキャリア (BST-COFDM)
|
| 変調方式
| 8-VSB
| QPSK、 16QAM、MR-16QAM、 64QAM、MR-64QAM
| DQPSK、QPSK、 16QAM、64QAM
|
| 機能・特徴
|
| マルチパス耐性
| × | ○ | ○
|
| 同一周波数中継 (SFN)
| × | ○ | ○
|
| 移動時の受信
| × | ○ | ○
|
| インパルスノイズ耐性
| × | ○ | ○
|
| セグメント単位での運用
| × | × | ○(※)
|
| 主な採用地域
| 北米・大韓民国
| 欧州・豪州・南アフリカ・インド
| 日本・ブラジル
|
※ 13のセグメントに分割し、それぞれに対して違った変調をかける事ができる(最大3種類迄)。簡易な受信機による部分受信(通称ワンセグ)が可能。
デジタル放送が本格化した際、海外との映像のやり取りで、方式の違いによる画質や音質の劣化といった悪影響が懸念される。
パソコン・携帯電話による受信(日本国内)
パソコンにチューナー機能を装備して地上デジタルテレビジョン放送を受信する場合(の問題)については限定受信システムの項目を、携帯電話端末などでワンセグを受信する場合についてはワンセグの項目をそれぞれ参照の事。
デジタル放送のデジタルデータを汎用バスに流す事はARIBで禁止されていて、パソコンでデジタル放送を利用するためには次の措置が採られている。
- SD解像度(800×600(4:3)、960×540(16:9))へ変換した上汎用バスに流す。ハイビジョン高画質は得られない。
- チューナーカードからディスプレイへ直接専用ケーブルないしD端子ケーブルで流す。但し、全画面表示になってしまい、「ながら見」ができない。改善されているものもある。
- チューナーカードでHDCP暗号化し、HDCP対応DVIでディスプレイ流し、HDCP対応ディスプレイで暗号化を解除して表示する。HDCP対応製品は高価である。
1番目と2番目は組み合わせて利用されている事が多い(ながら見は1番目で、高画質は2番目(全画面表示)で)。いずれの場合も、「信頼できるメーカー以外チューナーを提供しない」取り決めにより、自作PCなどで利用できる様になるのは当分先になると思われる。
ハイビジョン対応上の問題(日本国内)
2003年の地上デジタル放送開始当初、NHKは以前からBSアナログハイビジョン実用化試験放送やBSデジタル放送にてハイビジョン放送を行っていたので半数以上の放送局がハイビジョン対応の設備で所有していたが、民放各局ではどこも従来のSDTV(SD)(画面比4:3の標準画像)放送専用のスタジオやカメラしか持っておらず、ハイビジョン対応の設備はごくわずかしかなかった。もっとも、テレビ東京は2000年12月開局のBSジャパンでもハイビジョンでニュース番組など生放送番組を同時放送で行っていたので、スタジオ設備やカメラは既にハイビジョン対応化されていた。また、送出マスターの切り替え時期がテスト作業や準備の遅れからか、本放送開始から2~3ヶ月遅れてようやく地上デジタル放送対応の送出マスターに切り替えられた(TBSとフジテレビは統合型マスターに切り替えられるまでは簡易マスターでハイビジョン放送を送出する事ができた。)。
そのため地上デジタル放送開始当初のほとんどの番組は、従来のSD映像の横に黒帯を入れる事で16:9の信号に変換して送るアップコンバート方式の番組ばかりで、作過程から実際にHDTV(HD)撮影を行なって放送していたのはNHKデジタル総合テレビくらいであった。アップコンバート番組でも放送局側が4:3である旨の画角情報を付加すれば視聴テレビが4:3サイズ画面でも16:9画面でも自動的に適した画面サイズに表示される(但し、単体チューナーに従来の4:3テレビを繋いで使用する場合は、表示映像の画面変換制御はあくまでチューナー側の機能)が、現状(2006年初頭)でも画角情報の付加はNHK以外の放送局ではごく一部を除き殆んど行われていない。また民放のアナログ4:3サイズ放送向けに製作した映画番組ライブラリには作製の段階から上下に黒い帯を入れているものが多く、それらを地上デジタルテレビ向けに放送する際にはそのままアップコンバートしたものを使うため、「スーパー額縁放送」と呼ばれる表示状態になるアップコンバートハイビジョンと呼ばれる放送が行なわれていた。スーパー額縁放送の番組は、アップコンバートせずにSDTVの4:3サイズのまま放送した場合は、4:3の画面サイズで表示しても、スーパー額縁放送ではなく単なる額縁放送となる。(両者の違いや仕組みの詳細については当該項目を参照の事。)なお、これらのアップコンバートハイビジョン放送は、元の映像ライブラリが既にSD映像画質であることから、アップコンバートしたからといって、実際の画面の精細度がHDTV並になるわけではないので、一部では「なんちゃってハイビジョン」と揶揄されていた。
しかしその後、デジタルハイビジョンテレビの普及、及び受信可能地域が開始当初より格段に広がったため、民放局は急ピッチでHD放送を増やさなければならなくなり、HD対応スタジオやHDカメラへの切り替えを迫られた。
現在は東京の5大キー局で製作された番組の7割以上がHD製作である。よって現在はアップコンバート方式で送信していた放送開始当初とは逆に、地上アナログテレビジョン放送の方で送信する際にHD映像をダウンコンバーターを通して左右の部分をカットして画質を落としSD放送にするというダウンコンバート(エッジクロップ)方式が採られている(NHKでも地上・BSアナログ放送や国際放送のNHKワールドTV、NHKワールド・プレミアムでもこれと同じ方式が採られている)。また、HD製作とダウンコンバート方式の番組製作が主流になってからは、以前に製作した番組のアーカイブライブラリを放送する際も、サイマル放送でのソース管理の一元化の観点から、SD映像ソースを一端アップコンバートした後にアナログ放送用に再度ダウンコンバートする方法が多く採られるようになった。(但し、放送局のHD製作設備や環境の導入度などの事情により多少異なる。)
撮影段階からHD画質で撮られた映像は、一度ダウンコンバートされたとはいえ、アナログ放送で見ても画質がシャープで輪郭などがくっきりとしている。一方、SD画質で撮られた映像は、ワイド番組であっても輪郭や画面全体がぼやけて見えるため、アナログ放送でもその差がくっきりと表れている。
また、2006年からほとんどの民放局ではHD製作の番組は、冒頭で右上に「HV ハイビジョン制作(ハイビジョン番組)」(日本テレビ、TBS、テレビ東京系列局)や「HI-VISION ハイビジョン制作」(フジテレビ系列局)、「ハイビジョン制作」(テレビ朝日系列局)の表示を出す様になった(画面比4:3にダウンコンバートされた地上アナログ放送でも右上〈番組により左上や左下〉に同様の表示が出る。また一部BSデジタル放送やCS放送でも表示される場合がある。)。例外として、キー局のみHDで放送して地方局では地上デジタル放送でもSD放送で流している特殊な事情のある番組では、混乱を招く恐れがあるため表示されない。また、テレビ朝日系列の生放送番組「スーパーモーニング」・「ANNニュース」・「朝だ!生です旅サラダ」(朝日放送制作)・「サンデープロジェクト」などの番組は、テレビ朝日系列局(ANNフルネット局)ではHDで放送して、系列外の地方局(ANNクロスネット局の福井放送も含む)では最近まで地上デジタル放送でも4:3SD放送で流していた。しかし、2006年6月4日深夜に民放各局で使用されるNTT中継回線が完全デジタル回線化に移行されたことに伴い、系列外の放送局でもHD放送が行えるようになったため前述に挙げたケースは解消された(フジテレビやテレビ東京から系列外に同時・時差放送する番組はいまだに4:3SDの場合もある)。
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